東日本大震災後、福島から避難してきている子が近所に住んでいた。
その頃私は役員をやっていて、毎朝登校班の見送りをしていたので、
よく話をしたものだ。テレビで見たアルゼンチンアリの怖さを
共有したりして。人懐こくて可愛い子だった。
いろいろ事情はあるだろうが、毎日元気に遊んでいて、楽しそうだった。
ある日、その子が「俺ガンになったかな」と言った。
どうやら、前日に甲状腺検査があったようだ。
検査結果が出るまで気が気じゃないんだろう。これは健康診断あるあるだ。
たくさん笑うといいんだよ。ナチュラルキラー細胞が、
ガンなんか退治してくれるからね。
私はこうやっていつも子どもに嘘をつくのだ。
あの地震の後も余震の続く中、子どもに大丈夫だよって言い続けた。
被害はどんどん広がっていたのに。無責任なことばかり言うのだ。
放射線がどれ位人体に影響を与えるのか、本当のところはわからない。
誰の言う事を信じていいのか、大人達も右往左往していたのだ。
「トモダチ作戦」の時のやつです。
当時の乗組員の皆様が健康被害を訴えて、米国で訴訟を起こしているそうだ。
子どもは笑っていればいい。毎日バカみたいにゲラゲラ笑っていればいい。
子どもの笑顔は幸せを運ぶのだ。それが君達の仕事なのだ。
「今日書初めなんだよ。嫌だな」と元気がない日もあった。
ああ、習字、嫌だよねぇ。私も苦手。
堂々とした字で、のびのび書けばいいよ。
翌日「堂々と書いたよ~」と報告があった。
後日、廊下に張り出された彼の書初めは、はみ出しそうな位力強かった。
うちの子とは学年が違ったので、彼がクラスでどう過ごしていたのか
はわからない。その後引越しをしたし、彼も3年位で転校してしまったし …
今頃どうしているかな。