今日は子どもの誕生日。
とうとう12歳だね。おめでとう。
12歳。アフリカあたりだったら成人の儀式をやるお年頃。
ハマル族に生まれなくてよかったね。
ハマル族は「牛跳び」をしなくては成人として認められない。
並んだ10頭の牛の背を跳んで渡るのだ。4回も。
君の三段跳び能力ではとうてい無理だと思われる。
それにあわせて、少年が成人になれるようにと
親族の女性は自ら望んで、柳の枝で叩かれるのだ。
血が滲んで腫れるほどに。
親族の女性として真っ先に思い浮かぶのは母親だ。
君の母親といえば私だ。
嫌だ。
ハマル族に生まれなくてよかったな。お互いに。
あの夜は間違いなく、私の人生で一番幸せだった日だ。
出産に時間がかかりすぎて
胎児の心拍数が下がって、警報音がなりまくってるし
緊急搬送先に連絡している電話も丸聞こえ。
ヤバイ。頑張らねば。
やや間をおいて、渾身の力をこめて出産。
「頭が見えてるわ、もうすぐよ」
っていうドラマみたいなの、やりました。コホン。
赤ちゃんは出しきった、はず。
でも、鳴き声が聞こえない。
ああ、ダメだったのかぁ…
足元の方で、赤ちゃんが逆さまにぶら下げられてる。
例のアレ ? パンパン叩くやつ ? んで、オギャーってなるやつ ?
やって。それ、やって。赤ちゃん助けて。
先生は、足の裏をチョンチョンと軽く叩いた。
そして、無事に赤ちゃんは「ウェーン」と泣いた。
ありがとうございます。
あの時、赤ちゃんを叩かないでくれて。
口が悪くて、嫌味くさくて、嫌な奴だと思っていたけれど
赤ちゃんにだけは優しい人だった。
へその緒が、首に二重に巻いていたうえに
身体にもたすき掛けになっていたらしい。
そりゃ、そうそう出てこられまい。
よく生きて出てきたもんだ。
先生、今でも嫌いだけど、感謝はしています。
「あなた、へその緒が長すぎるのよ」
って怒られたのは納得いかないけどね。
あと、長時間の出産につきあってくれた夫。
今日は仕方ないから泊って行っていいわよって、
アノ先生が特例を認めてくれたのに、
「疲れてるんだから、家に帰ってゆっくり休んだ方がいいよ」
とか言って追い返してゴメン。赤ちゃん独り占めしたかったの。
私がベットの上で処置されている間、夫がずっと赤ちゃんを抱っこしてる
( させられてる。助産師さんがみんな忙しいから )
気が気じゃない私。ちょっと、チューとかしないでよねっ。
「奥さんがチューするなって言ってますよ~」
と助産師さんが大笑いしながら夫に伝えに行く。いいから仕事してろ。