猫を飼った事はないのだが、猫との思い出は結構ある。
私が子どもの頃は、野良猫もいたし、飼い猫も外に出すのが
普通だったから。
我が家は鳥屋敷で、大きなオウムもいたし、小ぶりなオウム、九官鳥、
庭にはニワトリもいた。ヒヨコやニワトリを襲うので、猫を見たら要注意。
追い払っても、追い払っても来るし、ニワトリ小屋のフェンス位
軽く壊される。ニワトリもバカなので、隙あらばチョロチョロ外に出るし。
よく覚えていないけれど、その頃は「猫は敵 !」みたいな感じだった我が家。
兄の飼っていたアロワナのエサの金魚もよく食べられた。
水槽のフタを開けて、前脚で器用にすくって食べているのを何度も見かけた。
上手いもんだな、可愛いので私は怒る気がしなかったが、
自分のお小遣いで買った金魚なので、兄は怒っていたような気がする。
鳥を飼うのをやめて数年した頃、庭の物置で見ず知らずの猫が出産した。
猫嫌いの両親も、さすがに追い出したりはせず
「ある程度育ったら、場所を変えるだろう」とそのままにしておいた。
近づくと「シャーッ」と牙をむきだして威嚇してくる母猫。
人間のにおいがつくと食べちゃったりするらしい、という話をきいて
( ゴールデンハムスターを飼ってる人が言っていた。猫にもあてはまるの ? )
家族の間に「物置侵入禁止令」が発令された。
1ヵ月程して、母猫が1匹ずつ仔猫を運び始めた。
安全な場所に移動するのだろう。うちだってわりと安全だぞ ?
仔猫は合計3匹。2匹までは無事運べたみたいだけれど、最後の1匹が~。
母猫ではない猫がさらっていってしまったらしいのです。父猫 ?
母や近所の人の目撃談では、白くて大きな猫だったとのこと。
それ、アレだ。私の同級生の家の猫だ。「チビ」って名前の巨大白猫。
そんな大きい白猫、ヤツしかいない。メス猫だったはずだけどな…
夕方遅くまで、母猫が仔猫を探して鳴いていた。
お風呂に入ろうとしたら、浴槽のふちで猫が休憩していた事もある。
猫って水嫌いなんじゃないの ?
家に帰ったらベットの上で猫がくつろいでいた事もあるし、
姿は消していたけれど、シーツにドロの猫足スタンプが
ついていた事は何度もある。
夏の夜テレビを見ていたら、網戸越しに猫の鳴き声が聞こえて振り返ると、
仔猫が網戸に張りついて、必死に何か訴えている。
エサ ? エサがほしいの ?
煮干しをあげてみるとわしわし食べる。
鰹節をまぶしたご飯を食べたら、お腹がいっぱいになったらしく、
いなくなる。何なの。
それからも、週に何度かエサをねだりに来ていた。
我が家から鳥がいなくなって10年以上が経過し、
猫憎しの心を失ったらしい母が、その後もエサをやっていたようだ。
そして、いつの間にか親猫なのか何なのか、大きい猫が増えて
2匹の猫がエサを食べに来ていた。2年位来ていた気がするけれど、
仔猫 (と言っても成猫にしては小さい程度) は大きくならなかった。
友達が「夏に生まれると大きくならないんだよ」と言っていた。本当 ?
玄関や窓を開けっ放しにする家だったので、こういう事になるのだと
思っていたら、私が結婚して遠くに引越してからも、猫がやってくる。
朝のゴミ出しの前に、庭に少しの間ゴミ袋を出していたら
ほんの数分ですよ ? チャトラン柄の大きな猫に荒らされていた。
大きくて毛並みが悪くて、目つきが悪い猫に、牙をむかれるわたくし。
それ以来、庭には一瞬たりともゴミを置かない事にした。
そんな事があったのも忘れた頃、洗濯物を干す為に庭に出ようとした
ワタクシ。あ、今、出ちゃいけない。
そこには、チャトラン柄の仔猫が2匹、飛び跳ねて遊んでいる。
その横には、ゆったりと尻尾で仔猫をあしらう、チャトラン柄の親猫。
何、ここ天国なの ?
大きくて毛並みが悪かったのは、お腹に仔猫がいたからなのね。
エサが探せなくてゴミ袋を漁ったのね。
妊娠中で気が立っていたのね。了解、了解。
ペットフードを置いておいたら、時々食べているようだった。
仔猫たちはエサより遊びに夢中で、掃き出し窓を叩いたり、網戸を破ったり、
うちの飼い猫でもないのに我が物顔で庭で遊んでいた。
1ヵ月程すると、網戸を開けると家の中にも入ってくるようになったので、
これは、飼っちゃお~ ☆ という空気が、我が家に流れはじめた。
邪心を察したのか、ぱったりと来てくれなくなってしまったんだな。
ある朝、掃き出し窓を開けると、庭から強烈な異臭がする。
魚が腐ったような臭い。く・さ・い !
我が家の隣にはゴミステーションがあったので、発生源はそこだと思い、
プンスカしながら、ホウキとチリトリを持って出向く。
アレレ、きれい。
そう、うちの近所の方々はゴミ出しのマナーがとても良い。
いつものように、一番奥のスミっこから順番に、キチッと結ばれた
ゴミ袋が並んでいる。カラス除けのネットも隙間なくピチッと
留められている。
庭に出て臭いの元を特定すると、そこには猫の死骸が半分腐っていた。
そこは、寝室の前の掃き出し窓。いつ来たんだろう。
前日まで2週間程、家を留守にしていた私達。
我が家にたどり着いた時はどんな状態だったのだろう。
ここで力尽きたのか、私達が在宅していればどうにか出来たのか。
移動する事も出来ない状態だったので、そのまま土をこんもり被せて
まんが日本昔話のようなお墓を作った。
「僕が25歳になったら、猫ちゃん、飼おうと思う」と子どもが言いだした。
大学を卒業して就職して、最初は仕事が大変で無理だから
3年位たって仕事に慣れたら、はれて猫を飼いたい、との事。
君の人生、そんなに計画通りにいくんだろうか ?