3日前に入院したとの知らせを受けた。
これから長くなるだろうとの事。
2日後には相談室でホスピスへの転院について話す予定だった。
「いま吐血して、血圧が下がってるのよ」と姉から電話が入る。
夏休み中の子どもと慌てて病院にかけつける。
病棟には小学生以下の子どもは入棟できない。それでも行きたいと言う。
ごめんね、決まりだから、と病棟の外のエレベータの前で別れる。
たくさんの管につながれ意識のない父。手だけが空をかき回す。
「意識はないのに起き上がろうとするのよ」と姉が言う。
家に帰りたいのだろう。
今回の入院について本人は納得していなかった。
だまし討ちにあったと腹を立てていたそうだ。
孫に会わせない訳にはいかないだろう。そう思わせる姿だった。
すみません… 外に子どもがおりまして、
小学生なんですが、もうほとんど中学生なんです。
忙しそうな看護師さんに意味不明な言葉をかける。
「いいんですよ。個室ですし、大丈夫ですよ」
決まりは守らないといけないけれど、粋な計らいである。
そういう状況なのだと改めて感じる。
「匂いがするでしょ」と姉がしきりに言う。
吐血した匂いなのか、癌の匂いなのか、
私と子どもはちっともわからず首を傾げる。
病院にありがちな消毒液の匂いしか感じない。
少し容体が安定したので、朝からつきっきりの姉が帰宅する。
1時間ほどたって、看護師さんが清拭と着替えをしますのでと現れる。
私たちも帰らないといけない時間だ。
明日も来るからね、と声をかけて病室を出る。